①半月板の構造と機能
膝半月板は大腿骨と脛骨で形成される膝関節の間に介在した線維軟骨で大腿骨と脛骨の適合性を高め、また関節に加わる衝撃を緩衝する作用があります。
膝半月板には、膝関節の外側に介在する外側半月板と膝関節の内側に介在する内側半月板があります。
内側半月板はアルファベットのCに近い形状をしており、外側半月板よりもその直径がやや大きく幅が狭い形状をしています。一方の外側半月板は円形に近い形を成し、内側半月板よりも幅が広い形状をしています。
内・外両方の半月板の外縁やや前方で関節包を介して膝蓋骨と連結する半月膝蓋靭帯を形成しています。また前角では互いを連結する膝横靭帯があります。
内側半月板は外縁が関節包と癒着しまた、その関節包を介して内側側副靱帯や半膜様筋腱の一部などと連絡しています。そのため、この半月板の可動性は非常に少なく、下腿が外旋する際も大きく可動しますが、周囲との密着により無理に引っ張られる状態になり、大きな負荷が掛かります。
一方の外側半月板は、外縁の前方半分程度が関節包と密着しています。しかし、中央から後方にかけて、膝窩筋腱が通る溝(膝窩筋腱溝)があるため、外側半月の外周1/3程度の長さで関節包から遊離している部分があります。
このため外側側副靱帯との連絡はなく、そのため外側半月板の可動性は内側半月板と比較して非常に大きく、また可動運動に際する負荷は小さい特徴があります。
外側半月板の後方の外縁は関節包と密着し、その関節包を介して膝窩筋の一部と結合しています。また、外側半月の後端では、後十字靭帯の前方を走行する前半月大腿靭帯と後十字靭帯の後方を走行する後半月大腿靭帯の2本の靭帯と連結しています。
半月板を断面でみると、外縁ほど厚みがあり内縁は非常に薄い形状をしています。また、関節包に付着する外側縁(周縁)1/3と前角および後角は血管と神経が侵入し、血行による代謝が得られていますが、遊離している内側縁(遊離縁)2/3は、血管や神経の分布がなく、関節液を介する代謝となっています。従って、半月板の内側縁の代謝は、膝関節の荷重負荷や関節運動により生じる関節内の圧力の変化を利用した、ポンプ作用的な方法で栄養の吸収や老廃物の排泄を行っています。そのため、寝たきりや極端な運動不足により廃用性の変性や壊死を生じやすい部分です。
上記の通り、直接血管や神経との連絡を有する半月板の外縁は、その損傷に際し自然修復される可能性がありますが、受動的な代謝に頼っている内縁の損傷では、変性や壊死といった状態になり、自然修復の可能性は、ほぼ皆無です。
②半月板の運動
半月板は、膝の屈伸や回旋運動に際して、連動して動きます。この半月板の運動により、膝関節のあらゆる角度において大腿骨と脛骨の関節面の適合性と関節運動の円滑性が保たれています。また、半月板の運動により関節液が攪拌され、関節内の代謝活動を補助する役割もあります。
⑴膝関節伸展運動に伴う半月板の運動
膝関節の伸展運動時は、伸展に向かうほど半月膝蓋靭帯により前方に引かれ、内側半月板と外側半月板がそれぞれ前方に向かって移動します。
⑵膝関節屈曲運動に伴う半月板の運動
膝関節の屈曲運動時は、屈曲するほど内側半月板と外側半月板がそれぞれ後方に向かって移動します。内側半月板は半膜様筋腱によって後方に引かれ、外側半月板は膝窩筋腱によりその連結部で後方に引かれます。この際、外側半月は内側半月の倍近く後方へ移動します。
⑶膝関節内旋運動に伴う半月板の運動
膝関節の内旋運動は、完全伸展位ではできないので、膝屈曲位の状態での内旋運動になります。膝関節の内旋運動とは、大腿骨に対して脛骨が内旋する動きとなります。この時、膝蓋骨は大腿骨と共に脛骨に対して外旋します。従って、膝関節の内旋運動に際して、内側半月板が大腿骨の内側関節面により前方に押され、また膝蓋骨と連結する半月膝蓋靭帯の内側線維によって外前方に牽引されるため、内側半月板は前方に移動します。一方の外側半月板は、大腿骨の外側関節面に押されるように後方へ移動します。
⑷膝関節外旋運動に伴う半月板の運動
膝関節の外旋運動は、完全伸展位ではできないので、膝屈曲位の状態での外旋運動になります。膝関節の外旋運動とは、大腿骨に対しての脛骨が外旋する動きとなります。この時、膝蓋骨は大腿骨と共に脛骨に対して内旋します。従って、外側半月板が膝関節の外旋運動に際して、大腿骨の外側関節面により前方に押され、また膝蓋骨と連結する半月膝蓋靭帯の外側線維によって内前方に牽引されるため、外側半月板は前方に移動します。一方の内側半月板は、大腿骨の内側関節面に押されるように後方へ移動します。
2.膝半月板損傷
膝半月板損傷は、接骨院を営む我々柔道整復師の治療活動においても、比較的遭遇頻度の高い損傷です。多くは、膝関節の捻挫や打撲、スポーツ障害として来院し、結果的に膝半月板の損傷を生じているケースが見られますが、中には明らかな外傷機転の無い症状が有り、原因不明で膝の痛みを訴えて来院される患者さんも散見されます。
この項目では、膝半月板損傷の概要を紹介し、速やかに的確な治療を受けるための参考として活用していただければと思います。
(1)膝半月板損傷の原因
膝半月板損傷は、スポーツ外傷や事故などを原因とする急性外傷性損傷により発症するものと、スポーツや労働による反復性外力によるもの、さらに種々の疾患や代謝障害で生ずる半月板の変性、あるいは半月板の形態異常や膝関節の構造的異常を起因する障害など、様々な要因により、もしくはこれらの要因が複合して起こります。
①捻挫に伴う半月板損傷
正常な半月板に損傷が起こる場合のほとんどが、捻挫などの外傷を原因としています。膝の捻挫により、膝関節を過度に内反や外反、または過伸展した場合、あるいは膝関節に急激に強い回旋力が加わった場合に、半月板が引き剥がされたり、捻り切れたりして起こります。
②膝半月板の先天的形態異常を起因とする半月板損傷
半月板の先天的形態異常は外側半月板に多く、正常よりも幅や厚みが大きくなります。このような形態異常を円板型あるいは円板状半月などといいます(上記半月板の異型を参照)。
円板型の半月板では、小児期のうちに、捻挫などの大きな外力を生じなくても、遊戯中に飛び跳ねたり、捻ったり、あるいはスポーツするなどの行為で、半月板が徐々に傷ついて損壊していきます。
③反復する外力による半月板損傷
スポーツや労働などで、繰り返し膝関節に負担を掛けていると、膝半月が徐々に擦り切れて損傷する場合があります。このような僅かな外力の反復によるものでは、気付かないうちに半月板が少しずつ傷付いて、非常に耐久力の弱い状態になっています。このような耐久力の弱った半月板では、労働中やスポーツ中に明らかな発症の原因が無く突然痛みを生じ、膝が動かなくなったり、足がつけなくなるなど、突発的に半月板損傷の症状が出現します。
④加齢や疾患などによる膝半月の代謝障害を起因とする半月板損傷
病気や加齢、極端な運動不足などにより、膝半月板の血行が阻害され、あるいは膝関節内の代謝活動低下が起こると、半月板の構造や機能を維持するための栄養補給や代謝産物の排泄が滞り、半月板は変性に陥ります。変性に陥ると、半月板は構造的に萎縮し、柔軟性や耐久力が損なわれて硬化するため、比較的弱い外力でも簡単に損傷を起こします。
⑵半月板損傷の症状
①膝関節の疼痛と圧痛
歩行時や膝関節屈伸時など、運動に伴う痛み(運動痛)が起こります。特に階段を降りる時、あるいは膝を深く曲げる動作や膝を完全に伸展した状態にしようとする動作の時に疼痛が著名に誘発されます。また、外傷性の半月板損傷では、関節内の出血や炎症により著しい腫脹が起こると、安静時でも強い疼痛を訴える場合もあります。一方、慢性経過による半月板損傷では、ほとんど疼痛を感じないこともあります。
痛む箇所は、内側半月板の場合、膝関節の内側関節間隙を中心に疼痛を生じ、同部分に圧痛を触知します。また、外側半月板の場合は、膝関節の外側関節間隙を中心に疼痛を生じ、同部分に圧痛を触知します。尚、膝関節内の出血や炎症による水腫(いわゆる関節に水が溜まった状態)を生じると、その程度により膝関節全体が痛む場合や膝の裏側に痛みを感じることもあります。
②跛行、膝崩れ現象
半月板損傷により、半月板の機能を損なうと、円滑な膝関節の運動が不能となり、跛行(足を引きずるような歩行)や膝崩れを起こします。
③関節異常音、弾発現象、嵌頓症状
半月板損傷により断裂部分が運動する度に引っかかるようになると、屈伸や回旋運動の時に音がしたり、引っ掛かって一度止まり、乗り越えるとガクンと弾かれるように動き出す弾発現象が現れます。また、断裂部分が嵌頓して、膝関節がロックされたように動かなくなることもあります。
④関節の腫脹
半月板損傷の程度や合併損傷の有無により程度は様々ですが、関節内に出血が起こり、あるいは滑膜炎症を併発して、著名な腫脹が出現することがあります。
⑤大腿四頭筋の萎縮
半月板損傷を起こすと、膝関節の機能低下に伴い、大腿四頭筋が萎縮します。
⑥その他
半月板損傷の有無を判断するための徒手検査がいくつかありますが、半月板損傷がある場合は何れも陽性を示します。しかし、半月板損傷では無くても陽性を示す膝の障害があります。従って、診断の確定には、整形外科によるMRI検査や関節鏡検査などが施行されます。
⑶半月板の損傷状態
半月板損傷では損傷状態により、症状や治療方法が異なってきます。従って、半月板損傷の疑いがあれば、整形外科にて適正な検査を受けて、必要な治療方法の説明や予後の見通しなどを判定してもらうことが大切です。
半月板の損傷状態により、外縁剥離、縦断裂、横断裂、水平断裂、複合断裂、変性に分けられます。複合断裂には、バケツ柄型断裂(断裂部分がバケツの柄のように解離したもの)、くちばし状断裂(縦断裂と横断裂が複合して鳥のくちばし状に裂けた状態)、フラップ状断裂(水平断裂と縦断裂や横断裂が複合した状態で飛行機の羽のフラップのように断裂したもの)などがあります。
以下に、いくつかの損傷パターンとその特徴を紹介します。
①外縁剥離損傷
周囲の関節包などと結合している外縁部分が、裂けるように剥離した状態です。半月板の外縁寄りは周囲組織からの毛細血管や神経の侵入があり、血行による代謝が得られているため、再生しやすい部分といえます。従って、手術などでは剥離部分の縫合処置が行われます。
②縦断裂損傷
半月板の一部が縦断状に裂けた状態です。縦断部分が外縁に近く、縦断範囲も短い場合は、比較的回復も良いようですが、内縁に近い部分で縦断したり、外縁近くでも縦断距離が長い場合は、バケツ柄型縦断裂という状態になります。
手術の場合、外縁に近く、縦断範囲が短めで、比較的回復の期待出来る状態であれば縫合術が行われます。一方で内縁に近い部位や縦断範囲が長くバケツ柄状になっているものなど、改善が困難な状態である場合では、その部分を切除する手術が行われます。
③横断裂損傷
半月板の一部が横断状に裂けた状態です。また、横断裂に縦断裂が加わり、鳥のくちばしの様な形に断裂したものを、くちばし状断裂といいます。
横断裂は内側縁より起こるため、断裂部分は縫合しても改善されません。従って、手術では切除術が行われます。
④水平断裂損傷
半月板の一部が上下2枚に分かれたように、水平方向に断裂した状態です。また、水平断裂に縦断裂が加わり、飛行機の翼のフラップのように折れ曲がった状態になったものをフラップ状断裂といいます。どちらの損傷形態でも、手術では切除術による処置になります。
⑤半月板の変性
半月板において、外傷性の断裂や反復する外力による経年的損傷などにより血行や代謝が遮断された部分、あるいは病的因子や加齢などにより半月板全体の代謝が低下した場合に、半月板を構成する組織が萎縮、硬化し半月板本来の機能や構造が失われます。このような状態を半月板の変性といいます。半月板が変性に陥ると、膝関節の衝撃緩衝性能を著しく失い、また円滑な運動や関節を構成する関節面の適合性を損なうため、関節軟骨の破壊や変形を生じます。
半月板の変性を生じた場合、特に高齢者では、損傷部分の切除を行うと、関節の変形が急速に進行する場合があるので、手術に際して慎重な判定を要します。
 *半月板損傷の合併症
外傷性の半月板損傷では、前十字靭帯の損傷に伴って、内側半月板損傷を起こす症例が多いと言われています。従って、関節内に血腫を伴った、特に縦断裂の場合は前十字靭帯の損傷の合併を疑います。
*陳旧性半月板障害
半月板損傷後、何らかの理由で半月板の修復が成されず、長時間放置されたままの状態を陳旧性半月板障害といいます。
陳旧性半月板障害に対しては、一般的に保存療法を行い経過を観察しますが、嵌頓や弾発現象などの症状を繰り返す場合などは、除去手術が行われます。
陳旧性半月板障害のままで放置されると、必ず変形性膝関節症に至ります。
⑷半月板損傷の治療
半月板の断裂部位や損傷状態により、保存療法か手術療法に分かれます。
診断の結果、半月板外縁の剥離や関節包からの血行が得られる外縁近くの損傷であれば、自然修復の可能性があるので、ギプスや専用装具などによる固定を施行して、様子を見る場合があります。この場合は、6〜8週間程度は固定を施行し、固定除去後もさらにサポーターなどの簡易装具で経過を観察します。保存療法の場合、スポーツ活動復帰まで3ヶ月以上を要します。尚、このケースのように自然修復可能な損傷状態であっても、断裂部位の安定性が得られない場合は、縫合手術が選択されます。
保存療法に適応しない損傷では、損傷部位の切除術が施行されます。
半月板の部分切除を行った場合は、翌日から関節可動域訓練や大腿四頭筋強化訓練が施行されます。また、荷重歩行も1週間後には開始されます。
半月板の縫合術を行った場合は、縫合部分の癒合具合を見ながら、可動域訓練や大腿四頭筋強化訓練が加えられていきます。荷重歩行が可能となるのは3週以降となることが多いようです。
⑸予後
保存療法や縫合手術により、半月板の癒合が良好ならば予後は比較的良好です。一方で半月板切除後では、関節軟骨への物理的負担が大きくなるため、関節の変形を避ける事は出来ません。従って一般的に、切除する範囲が小さいほど、術後の経過は良好となります。
合併症
半月板損傷のうち合併損傷のないものは42%である。靭帯損傷の(67%)に半月損傷を合併する。半月板損傷の54%に靭帯損傷(ACL損傷が98%)を合併し、不安定性が残ると予後不良となる。深層に達する関節軟骨損傷の43%に半月板損傷を合併する。半月板損傷の9%に深層に達する関節軟骨損傷を合併し、これが予後不良となる。スポーツに特徴的な膝伸展型の受傷では外側半月と外側脛骨プラトー、大腿骨外側顆の関節軟骨損傷のいずれか一方または両者を合併して発生する。
合併損傷のある半月板損傷の治療
ACL不全に対しては一義的にACL再建術が適応である。
ACL再建術の適応の場合は同時に、できれば半月縫合術、半月損傷放置または保存療法により半月機能の温存をはかる。しかし、損傷型、損傷部位などによっては半月部分切除術も相対的な適応となる。
後療法
半月部分切除の場合は術翌日から可動域、筋力の回復訓練を開始する。出来るだけ早期に部分荷重、全荷重を開始する。リハビリテーションプログラムは膝痛、関節水症の状態を見て加減する。術後2週間は無理せず徐々に加速していくのがコツである。
関節切開による関節縫合術の場合は、術後6週は両松葉杖で膝の可動域を制限する。6週以後積極的な筋力強化を行い、3ヶ月以後本格的なスポーツに復帰する。
鏡視下半月縫合術の場合のリハビリテーションプログラムは徐々に変化してきている。5、6ヶ月をめどにスポーツ復帰させる。
ACL損傷合併例でACL再建術を行った場合は、部分切除、縫合のいずれでもACL再建術の後療法に準拠する。
半月板の自然治癒能力は低いため、不安定型の半月単独損傷に対しては保存的治療の適応はない。ACL再建術を行う時に、半月損傷に対してあえて外科的侵襲を加えずに経過観察をした症例の再鏡視所見を検討した。ACLによく合併する外側半月後節の短い縦列は放置しても修復(完全または不完全)され、不完全修復例も安定型のものであれば症状の原因とはならなかった。内側半月後節の外周縁部縦裂も短いものであれば修復された。半月実質部の周縁1/3の安定型の縦裂の予後の大部分は自然修復し、縦裂の拡大により再手術を余儀なくされたのは少数である。さらに中心寄りの縦裂や横裂は修復しないこともわかった。従って、半月周縁部寄りの不全損傷など安定型の縦裂に対しては、あえて手術侵襲を加えずに放置して経過観察し、半月症状が出現してから縫合あるいは部分切除を選択すべきである。
徒手検査法
・マックマレーテスト
・圧迫アプライテスト
・ワトソン・ジョーンズテスト
・ステインマンテスト