弾発股とは、股関節の周辺にある腱や筋が、骨の出っ張った部分などに引っ掛かり音が生じて、痛みも伴う股関節の疾患のことです。大腿骨の外側の部分と靭帯との間で引っ掛かりがあり、そこで炎症を起こすことで股関節痛を生じます。股関節が動く時に、その引っ掛かりから、コツンとかボキッとかいう音を発するため、弾発股はばね股とも呼ばれることがあります。弾発股は比較的若い女性に出やすい症状とも言われ、股関節部に炎症がある間は、激痛を伴う疾患です。
「分類」
外側型:大転子と腸脛靭帯との摩擦
               大転子と大殿筋との摩擦
内側型:腸腰筋と股関節近傍の骨性隆起との摩擦
・関節外型→◯外側型(大転子と腸脛靭帯の滑動障害)
                      ・腸脛靭帯や大殿筋前縁の肥厚、索状形成、瘢痕、緊張増加
                          スポーツによる慢性持続性外傷
                           外傷痕
                          注射による医原性(臀筋や大腿四頭筋拘縮)
                          特発性
                       ・大転子の異常
                          大転子の外側方化(内反股・股関節手術後など)
                          大転子の変形(骨折後など)
                          大転子滑液包炎や腫瘍など
                      ◯内側型(腸腰筋腱と大腿骨頭や腸恥隆起などの滑動障害)
・関節内型→関節遊離体
                     股関節唇断裂
                     反復性・習慣性・随意性股関節脱臼(亜脱臼)
「原因」
◯関節外型
外側型→緊張し肥厚した腸脛靭帯あるいは大殿筋前方線維が大転子部で弾発現象を生じる摩擦の結果、大転子部の滑液包炎をきたし有痛性となる。
内側型→腸恥隆起の外側を走行する腸腰筋が腸恥隆起を一部乗り越えて内側へと滑動することにより引き起こされます。
◯関節内型
関節唇の障害→関節唇の断裂により股関節内に断裂部が嵌頓し、疼痛と弾発現象を生じる。特に多いものはバケツ柄断裂である。
関節遊離体→滑膜骨軟骨症や変形性股関節症に伴う関節遊離体が関節裂隙に嵌頓し、疼痛と弾発現象を生じる。
「診断」
◯関節外型
外側型→病歴聴取と触診によりほぼ確定診断が可能である。股関節の運動に際し、大転子部に腸脛靭帯の滑動を触知することが出来る。この滑動は、股関節を内転位に保ちながら屈曲していくと約30〜50°屈曲位にて腸脛靭帯が大転子後方から前方へと突然移動することが多い。また同部に圧痛を認める。
内側型→股関節屈曲位より自動伸展を行わせると45°付近で弾発現象をみる。圧痛は股関節前面、鼠径部に認める。CT像により腸恥隆起の異常膨隆をみることがある。また腸腰筋腱腱鞘の造影、超音波検査も診断の補助となる。局所麻酔薬の注入により疼痛が軽減することも手掛かりとなる。
◯関節内型
関節唇の障害→病歴聴取が最も大切である。スポーツ活動や日常生活動作において、股関節の屈曲・伸展時に際して股関節前面(鼠径部)外側に疼痛を訴える。突然股関節の伸展が不能となるロッキング現象をきたすことが多い。疼痛の性質は膝関節における半月板障害と類似しており、何か奥歯にものが挟まったような感じと訴える症例が多い。股関節の自・他動運動に際して疼痛を訴えるが、安静時痛は少ない。腸脛靭帯などに起因する関節外型の弾発股と比較して関節内型の疼痛は高度なことが多い。そして股関節のロッキング現象はしばしば自然に消失し、それとともに疼痛も寛解する。また膝くずれ現象をきたすこともある。しかし、この膝くずれ現象は膝関節に由来するものではなく、疼痛は股関節周囲に訴える。しばしば股関節の屈伸運動に際し、股関節前面に大きな「ガクッ」という雑音を触知することが可能であり、股関節前面に疼痛を認める。画像診断は困難である。完全に膝関節内に嵌頓した関節唇は関節造影やMRIで描写することも可能と思われる。通常では、股関節鏡検査により確定診断を行うと同時に関節唇部分切除術を行っている。なお臼蓋形成不全や大腿骨頭の変形など、軽度の変形性股関節症を認める症例もあるため、これらを確認する意味での単純X線像やMRIなどは必要である。
関節遊離体→病歴聴取と各種画像診断により確定診断が可能である。日常生活動作において、股関節運動に際して股関節周囲の疼痛を訴える。疼痛部位は一般に漠然としているが、大転子のやや中枢外側や股関節後面などに訴えることが多い。圧痛もしばしば同部に訴えることが多いが、はっきりとした部位の同定は困難である。また、突然股関節の伸展や外転が不能となるロッキング現象を生じることも稀ではない。滑膜骨軟骨症では単純X線像において多数の遊離体をみることができる。また関節造影やCT、MRIなどの各種画像診断により確定診断が可能である。
オーバーテスト
テスト目的:大腿筋膜張筋・腸脛靭帯の拘縮の有無
患側位置:患側下肢を上にして側臥位にする。
テスト方法:患側の膝関節を90°屈曲し、股関節を可能な限り外転させて、腸脛靭帯を弛緩させる。そして外転させた下肢を離すと、正常であれば内転位に落ちていく。(股関節の角度を何度か変えて実施する)
陽性の場合:下肢をはなしても外転位でとどまる。
備考:*テストの陽性反応は、ポリオ(ポリオウイルスによる伝染性疾患)や、脊髄髄膜瘤(中枢神経系の先天性障害)によって起こることがある。
*腸脛靭帯の最も伸張された位置は股関節伸展位、膝関節屈曲位である。
「治療」
◯関節外型
外側型→保存的治療として、スポーツ活動の一時休止、温熱療法、抗炎症薬の投与、局所へのステロイド薬やヒアルロン酸注入などが一般的である。
内側型→腸恥滑液包の炎症をきたしていることが多いので、局所へのステロイド薬やヒアルロン酸注入とともに、安静、腸腰筋のストレッチなどで対処する。
◯関節内型
関節唇の障害→保存療法治療として、安静、下肢の牽引療法、スポーツ活動の一時休止、温熱療法、抗炎症薬の投与などを行う。関節内へのステロイド薬やヒアルロン酸注入などにより一時的に疼痛は寛解する。より実際的な治療法は股関節鏡による確定診断と関節唇部分切除である。
関節遊離体→保存療法は一般的に無効である。より実際的な治療法は関節鏡視下に遊離体摘出術を行う。従来の股関節を大きく展開して行う観血的治療法と比較すると、術後の大腿骨頭無腐性壊死の危険性や可動域制限もなく、侵襲も小さい。したがって、仮に取り残しがあり症状が再発した場合でも、再度摘出術を行うことが出来る。
「後療法」
病態を考慮した適切なストレッチと筋力強化トレーニングが効果的です。休養後に運動を再開場合も、まず十分にウォーミングアップを行い、ランニングの場合は硬い路面、排水溝などで両端が傾斜している路面、坂道などでは避けるようにします。運動後に痛みや熱感が強い場合にはアイシングをします。
*股関節を繰り返し動かす動きを避ける事が大切です。そのためには、自転車に乗る時間を減らし、手だけを利用しての水泳等が勧められます。また、股関節前面のストレッチや殿部の筋肉の強化等も有効です。
「まとめ」
弾発股は原因や部位によって、治療法や予後が異なります。治療や休養によって症状が改善しない場合は手術が検討されます。