膝の曲げ伸ばしを繰り返すことで、膝蓋骨と脛骨をつなぐ膝蓋靱帯が炎症を起こします。重症例では膝蓋靱帯が完全に断裂します。
バレーボール、バスケットボール、走幅跳や走高跳びなどの陸上の競技、野球[キャッチャー]、サッカー[キーパー]などのジャンプや屈伸運動を繰り返すスポーツのよって起こりやすくジャンパー膝や大腿四頭筋腱炎とも呼ばれ、とくに成長期や身長の高い人によく見られます。発生頻度は、思春期女性に多く、一側・両側ともに発生します。膝蓋靱帯炎は全スポーツ外傷の約7%、膝関節慢性外傷の約30%を占めます。
◯分類
ロールズの分類
Phase1・・スポーツ開始直後に膝蓋骨の直下か直上に疼痛を生じますが、スポーツをするのに支障がないことが多い時期。
Phase・・運動開始時と運動後には痛みは生じますが、運動中には一時的に疼痛は軽快、消失するようになります。スポーツの継続は、この時点では可能なことが多いのですが、専門医に診察が必要な時期
Phase・・痛みのためにスポーツの継続が困難
Phase・・膝蓋腱の断裂
◯原因
多くは、ランニングや跳躍の助走での着地時に大腿四頭筋に伸張性の負荷に加わり膝蓋腱が伸張されることと、その際に膝蓋骨下端の突出部と摩擦が生じることです。また膝の直線的動作(屈伸)のみならずサイドステップ・カッティング・ターン動作など捻り動作(内・外旋)の関与も大きく、とくに大腿四頭筋が硬い場合や骨盤・股関節の可動域不足の場合に強く働きやすいです。
◯症状
膝蓋骨の周囲に疼痛。
主症状は膝蓋骨周囲の疼痛であり、初期には運動後の疼痛であるが次第に運動時痛が出現します。運動後ならびに長い座位後には自発痛も見られることもあります、また、膝くずれや膝の引っ掛かり感、こわばりを訴えることもあります。視診上見られることは少ないが膝蓋骨周囲の軽度のびまん性腫瘍や関節可動域制限や大腿四頭筋の筋萎縮を認めることもあります。
◯診断
問診と触診所見から診断は比較的容易にできる。現在行ってるスポーツ種目の聴取、症状発現の状況、自発痛および運動痛の有無などを問診した後、局所の診察を行う。
1、疼痛再現テスト
単に膝蓋骨下端を押すのではなく、一方の手で膝を軽度屈曲位にして保持しつつ、同側の母指で膝蓋骨上端を圧迫して遠位方向へ固定して膝蓋骨下端を突出させ、他側の母指で下方より挟み込むように押すこと。
2、大腿四頭筋伸展テスト
患者を伏臥位にして膝関節を他動的に屈曲していく。大腿四頭筋に短縮があれば、踵は臀部に接触せず、膝蓋靱帯付着部に炎症があれば同部に痛みを伴う。これを強制させれば尻上がり現象が生じ、股関節を屈曲して大腿四頭筋の短縮や痛みによる膝の屈曲制限を代償しようとする。
3、画像診断
X線学的検査では原則的には異常所見は認めない。しかし膝蓋骨下端の不整像や延長化、思春期では軟部組織の腫脹、石灰化が見られることがある。
◯鑑別診断
・オスグッド病
脛骨粗面が膨隆し、限局した痛みがある(骨端症)。好発年齢は10〜15歳頃。
◯治療・予防
原則→保存療法
膝蓋靱帯断裂時→観血療法
◆初期◆
急性期では、ジャンプやランニングを中止させ局所の安静を保ちながら20〜30分間、氷嚢による冷却を程度に応じて2〜3回繰り返す。熱感・腫脹などの急性期の炎症所見が消失した後、温熱療法やマッサージを大腿四頭筋から膝関節周辺に行い、血行の改善と筋・腱組織の肥厚・拘縮の防止を図る。
◆回復期◆
ジャンパー膝に限らず、膝の障害では大腿四頭筋の萎縮・短縮を起こしているケースが非常に多いため、回復期のトレーニングはストレッチと筋力トレーニングを中心としたプログラムとなる。10〜15分間温め、大腿前面と膝蓋靱帯部に5分程度のマッサージを行った後、以下のようなメニューを実行する。
・静的ストレッチ
腹臥位になり、背後にまわした両手で患肢の足部を保持して膝関節をゆっくりと屈曲させる。伸張感を感じたところで20〜30秒間ストレッチしてゆっくり戻す。これを3〜5回繰り返す。
・レッグエクステンション
ベッドに座り下腿を垂らす。足首に負荷をかけて膝関節の伸展をゆっくり行わせる。負荷量は痛みの出ない範囲で0〜20kgを目安に調節し、20回を1セットとし3セット行う。
・ジョギング・ジャンプ
筋力強化訓練後に軽いジョギングを行うが、健側の負荷量に近付いてきたら徐々にランニング強度を強め、ジャンプ練習も加えていく。
・アイスマッサージ
訓練終了後10〜15分間、患部に対してアイスマッサージを行う。練習を再開するにあたっては、練習前後に大腿四頭筋のストレッチングを含めたウォーミングアップを十分に行い、練習後には同部のストレッチの後にアイスマッサージを10〜15分間励行する。また、ジャンプ練習は体の温まっている時期に行うなど、練習順序の工夫も再発を予防する上で重要となる。