〜腓骨筋〜
腓骨筋には長腓骨筋と短腓骨筋の二つがあります。
・長腓骨筋:脛骨外側顆、腓骨頭と腓骨外側面近位2/3に起始し、個人差がありますが腓骨遠位1/3で腱に移行し外果後方の腱溝を経て内側楔状骨外側と第1中足骨基底部に停止する。足関節を外反、底屈する作用。
・短腓骨筋:腓骨外側面遠位2/3に起始し外果後方のやや近位で腱に移行して、外果後方の腱溝を通過して第5中足骨底部外側に停止する。
*外果部では長腓骨筋腱は短腓骨筋腱より外側に位置する。
☆腓骨筋腱脱臼とは
分類
1.先天性脱臼
(腓骨筋支帯の弛緩・脆弱性・腓骨筋腱溝の形成不全)
2.後天性脱臼(外傷性、非外傷性)
発症原因には先天性と後天性に分けられ、後天性には外傷性と外反扁平足変形を伴う非外傷性があります。
外傷性では、足関節の外返しに伴い発生することが多い。内返しによって発生するとの説もあるそうです→腓骨筋支帯損傷
非外傷性には腓骨腱溝や筋支帯の形成不全または欠損が存在し、それに外傷が加わって発症するものと、外傷により腱溝を形成する腓骨の辺縁部裂離骨折を伴って脱臼するものがあります。
*スポーツでは『スキー』が最も多い。→急激なターンの際
その他にはバスケットボールやサッカー、ランニング中にも発症する。
足関節背屈位→腓骨筋腱の強い収縮(背屈が起こり、筋支帯の伸張、あるいは断裂によって長腓骨筋腱脱臼が生じます。
腓骨筋腱には長・短2本あるが、2本とも脱臼することは稀であり、浅層を走行する長腓骨筋の単独脱臼が多い。
↓理由
外果の後方では長腓骨筋腱が短腓骨筋腱に比べて外側に位置しているからです。
足関節を90°直角にしている場合では腓骨筋腱は後方に125°の角度でカーブしていますが、足関節を背屈すると90°の角度深く曲げられてしまい、前外側へ押し出されるような力が加わります。長腓骨筋は筋組織の部分が長い上、急激な方向転換などを強いられる機会が多いため脱臼の危険性があります。
☆症状
軽症では踏み込んだ際の疼痛、不安感がある。重症では日常生活の歩行や階段昇降でも疼痛を訴えます。足関節の背屈を伴った動きで脱臼感を自覚します。(患者訴え:外くるぶしがずれる感じがする。)
習慣性になっている場合には、歩行時に脱臼した腱が腱溝内に整復される際に大きな弾発音を生じることもあり、その際に疼痛を訴え、外果上に脱臼した腱を触れます。習慣性や非外傷性では長時間の歩行で倦怠感や鈍痛を訴えます。
☆診断
外傷性腓骨筋腱脱臼
新鮮例の場合
足関節捻挫に似た症状を認めます。来院時点では脱臼した腱が自然に整復されていることが多いため見逃されることがあります。
鑑別方法として、足関節を約30°底屈、内反位とし検者の母趾を用いて足関節外果の後面に強く当てながら後方より前方へ移動させることにより、腓骨筋腱を外果に押し出して脱臼を誘発させる方法があります。
陳旧性の場合
アプリヘンションサインが存在することがあり、単純X線撮影で骨折のないことを確かめます。MRIで腱脱臼を認めると確定診断でき、自然整復されている場合でも腱周囲の出血や水腫、腱損傷などを同定出来ます。
*アプリヘンションサイン(脱臼しそうな不安感)
*外側側副靱帯との鑑別が重要です。
圧痛点の部位の相違、ストレスX線像などによって鑑別されるがまれに両者が合併することがあり注意深い観察が必要です。
☆治療
投薬・固定・免荷・物理療法→患部の炎症を抑える。
装具・テーピング→筋・腱の負担を軽減する。
運動療法→筋肉を柔軟にし、筋力をつける。
明らかな腱の脱臼がみられ、症状が強い場合=手術療法
陳旧例ではD u Vries法に準じる骨性制動術などが必要。
〜D u Vries法〜
外果部中心に腓骨を台形に骨切りして、後方へ移動させてスクリューで固定する方法です。
保存療法
急性期ではギプス固定を行い2〜3週間着用させる。腓骨筋の使用を短期間中止してから運動療法を開始する。スポーツ復帰には2ヶ月以上かかりますが、受傷前のパフォーマンスに戻るまでは3ヶ月以上はかかります。
運動療法には関節可動域エクササイズや腓骨筋の筋力トレーニングを行います。
*初回脱臼では保存療法の適応を考えるが、2回以上受傷している場合は、自身の活動レベルや年齢を総合的に考え観血療法を行うこともあります。
1.関節可動域エクササイズ
足関節背屈に制限があると、腓骨の後方移動が不十分になり背屈時に腓骨筋が前方に移動しやすくなり、この際に内転や内反が強制させられると脱臼方向に腱が移動するため背屈の可動域は確保しておく必要があります。
2.腓骨筋の筋力トレーニング
腓骨筋の緊張が低下すると脱臼方向へのストレスが増加します。また、腓骨筋の収縮不全は足関節内反捻挫を引き起こす可能性があり足関節内反捻挫は内転・内反を強制されるために腓骨筋脱臼をさらに助長する可能性があります。腓骨筋のトレーニングの重要性はそこにもあります。
*急性期での積極的な腓骨筋トレーニングは再脱臼を引き起こす可能性があるため注意が必要です。