足関節(距腿関節)の解剖
距腿関節は、関節頭である距骨滑車と関節窩である脛骨の下関節面・脛骨の内果関節面・腓骨の外果関節面からなる蝶番関節である。この関節は内側(三角)靭帯、前距腓靭帯、後距腓靭帯、踵腓靭帯により内側・外側が補強される。

前距腓靭帯・・・外果の前縁から起こり距骨頭の外側部に付く。後距腓靭帯、踵腓靭帯とともに距腿関節の外側を補強する。また、足関節底屈時に緊張する。足関節の内返しを抑制する機能と距骨の前方移動を抑制する機能がある。
踵腓靭帯・・・外果の下縁から起こり踵骨の外側に付く。距踵関節を補強しているが、安定装置としての働きは骨間距踵靭帯の方が大きい。

・底屈の際、距骨は前方へ滑る。前部関節包や前距腓靭帯は緊張し、後部関節包などは弛緩する。
・距骨の構造は、上から見ると台形を呈していて前方や広く後方が狭くなっている。そのため、足関節底屈時には距骨が前方へ滑り下腿骨との接触面積が狭くなり足関節は緩くなる。

足関節捻挫について
・足関節捻挫において内返し捻挫が外返し捻挫より多発する。
・内側側副靱帯と外側側副靱帯を比較すると、外側が弱い構造になっている。
・捻挫の多い理由として、距腿関節は常に荷重のかかる関節であり関節可動域が比較的せまい関節である。また距骨の構造上、足関節底屈時では関節が緩くなり回内しづらくなる。
・足関節底屈時に緩くなった足関節が回外・内転・内旋を強制(内返し捻挫)されるため、構造上弱い外側側副靱帯が損傷されることが多くなる。

『原因』
バレーボール・バスケットのジャンプの着地や地面に足をとられてしまった際などに多発する。

『症状』
外側側副靱帯損傷(内返し捻挫)の場合
・足関節外果前方〜下方への腫脹、疼痛、皮下出血班がみられる。受傷直後は疼痛のため起立不能となることがあるが、時間の経過と共に歩行可能となる場合もあり、疼痛や損傷の程度が必ずしも一致しない。重症例では足関節の前方引き出し症状や距骨傾斜角の異常を認める。
・断裂した靭帯部に陥凹を触知する場合がある。
・受傷肢位と同肢位にて疼痛増大する。
・背屈は可能となる。*受傷肢位とは反肢位のため
内側側副靱帯損傷(外返し捻挫)の場合
足関節内果部〜前方外側への腫脹、疼痛

『分類』オ・ドノヒューの分類
第1度・・・靭帯線維の微小損傷、軽度の限局性圧痛
第2度・・・靭帯の部分断裂、関節の不安定性有り(軽度〜中度)機能障害
第3度・・・靭帯の完全断裂、不安定性は著明、機能障害高度

『合併症・鑑別診断』
・裂離骨折
足関節捻挫では外果(内返し)・内果(外返し)の裂離骨折を起こすことがある。内側側副靱帯は強靭な構造になっている為、外返し捻挫では内果の裂離骨折を起こすことが多い。一方、外側側副靱帯は比較的弱い構造になっており、外果の裂離骨折を起こすことは少ない。しかし、外返し捻挫より内返し捻挫の方が圧倒的に多いため、外果の裂離骨折が多い。
鑑別→脛骨・腓骨の叩打痛
・二分靭帯損傷
踵骨の前方突起と舟状骨、立方骨を結ぶ靭帯。
受傷肢位は外側側副靱帯と同様に内返しで発生する。
鑑別→圧痛点で判断する。
圧痛部位:外果と第5中足骨基部を結ぶ線の中点から2横指前方に存在する。

『検査法』
・前方引き出しテスト(必ず健側と比較)
患者仰臥位の状態で一手で下腿遠位部、もう一手で足関節を把握し、他動的に踵骨部を前方に引き出す。このとき母指を前距腓靭帯部に当てる。
完全断裂→外果に対して距骨が前方に移動するのが触知可能。
部分断裂→引き出しと同時に内旋を加えると外果、距骨間に間隙が生じる
*三角靭帯前脛距部を弛緩させるために内旋を加える
・内反動揺検査
患者仰臥位にて足関節を把握し、内反を強制。この時母指を踵腓靭帯部に当てる。
距骨と外果下端部の間隙が健側と比較して、大きければ踵腓靭帯損傷の合併を疑う。

『治療法・予防』
損傷の程度や患者の年齢、性別、職業、生活習慣を踏まえて判断する。
・靭帯損傷の無いもの
RICE処置を行う。
・前距腓靭帯の部分断裂、完全断裂
①RICE処置を行う。
②足関節外反位で副子固定やギプス固定などを行う。
③固定を行ったうえで松葉杖による免荷歩行を許可する。
・外側側副靱帯の完全断裂
①RICE処置を行う。
②足関節を0°にして踵部をやや外反位とし、シーネまたはギプス固定を行う。
③患肢荷重は禁止。松葉杖による免荷歩行。
④必要に応じて観血療法を行う。

治療方針
受傷直後には、テープ固定などの上からアイスパックなどで冷罨法を実施。
受傷から3日間は腫れや熱感が続く。→3日間はRICE処置を行う。
『15分間実施ー1時間休憩』を繰り返す。
*急性期では初期治療が最も大切です。

受傷後1週間頃には、賞状が段々と引いてくるので温熱療法を実施する。
固定期間中には足関節周辺の筋に対して、等尺性収縮運動を励行する。また、足趾部の運動は早期から行わせる。
固定除去後には足関節伸展(背屈)、屈曲(底屈)の自動運動を行わせ、関節拘縮の改善と筋力増強訓練を行わせる。
スポーツ選手では、長・短腓骨筋、第3腓骨筋の筋力強化を行わせ外反力を強化し、受傷後3〜6ヶ月間は、テーピングなどを装着させ、再発防止に努める。

足関節捻挫を予防するポイント
①ゴムチューブやタオルなどを使い、足関節周囲筋の筋力強化を行う。
②下腿三頭筋のストレッチなどを行い関節可動域の改善を図る。

『後遺症』
足根洞症候群
・足根洞は距骨滑車前外側下方と踵骨前外側上方に囲まれた漏斗状の領域。
・固有感覚受容器が豊富に存在する。
・足関節捻挫後に発症し、疼痛や不安定感が残存することがある。